映画「半世界」の感想ネタバレ|タイトルの3つの意味とラスト・結末を解説

映画「半世界」の感想ネタバレ|タイトルの3つの意味とラスト・結末を解説

映画「半世界」とはいったいどういう意味が込められたタイトルなのでしょうか?

作品の紹介や感想ネタバレとともに、監督が語るタイトルに込めた思いや、作品を見て感じたタイトルの3つの意味をご紹介します。

作品情報

映画「半世界」のあらすじ

40歳目前、諦めるには早すぎて、焦るには遅すぎる。大人の友情と、壊れかけの家族と、向き合えずにいる仕事。

「こんなこと、一人でやってきたのか」。山中の炭焼き窯で備長炭を製炭し生計を立てている絋は、突然帰ってきた、中学からの旧友で元自衛艦の瑛介から、そう驚かれる。

なんとなく父から継いだ絋にとって、ただやり過ごすだけだったこの仕事。けれど仕事を理由に家のことは妻・初乃任せっぱなし。それが仲間の帰還と、もう一人の同級生・光彦の「おまえ、明に関心持ってないだろ。それがあいつにもバレてんだよ」という鋭い言葉で、仕事だけでなく、反抗期の息子・明に無関心だったことにも気づかされる。やがて、瑛介の抱える過去を知った絋は、仕事や家族と真剣に向き合う決意をするが・・・。

(パンフレットより)

監督・脚本

監督・脚本は阪本順治。

本作が26本目の監督作、第31回東京国際映画祭に出品され、観客賞を受賞

本作は、2017年9月にジャニーズ事務所を退所、各メディアから干された稲垣吾郎に新境地を与えるべく完全オリジナル脚本として作られた。

登場人物紹介

高村絋(稲垣吾郎)・・・地方都市の郊外で父から受け継いだ備長炭製炭業を一人で切り盛りする。口下手で家族とうまく付き合えていない。

沖山瑛介(長谷川博己)・・・絋の中学からの旧友。自衛隊員として海外派遣されていた。妻子と別れて故郷に一人戻ってくる。

岩井光彦(渋川清彦)・・・絋の中学からの旧友。中古車販売の自営業を家族でしている。独身。

高村初乃(池脇千鶴)・・・絋の妻。息子のことなど家族の問題を一人で背負っている。

高村明(杉田雷麟)・・・絋の中学生の息子。学校でいじめを受けている。

映画「半世界」の感想ネタバレ

SMAPのためにできることを模索した監督の漢気

2016年12月末、SMAPが解散させられました。

その後見事にメンバーたちはテレビ局から干され、ジャニーズ事務所はSMAPという言葉がこの世から消し去ろうとしてきました。

多くのメディアがジャニーズ事務所の圧力を恐れ、手を差し伸べない中で「何か自分にできることはないか?」と、この作品を作り稲垣吾郎に活躍の場を与えてくれたのが阪本順治でした。

人生に迷った男の藁をもすがる思い

私はまだ40歳目前…という訳ではないのですが、境遇としては岐路に立たされていました。

中学からの親友に裏切られ、会社を潰され、この先どう生きるべきか思い悩んでいる時期でした。

人生の折り返し地点を描く作品から何か得られるものはないか?と藁をもすがる思いでした。

 

この作品で自分自身を投影してしまったキャラクターは長谷川博己演じる瑛介でした。

彼は自衛官として海外赴任後、退職して妻子とも別れ、8年ぶりに帰郷したという何か訳ありな男です。

瑛介がコンバットストレスに悩まされることになった理由

瑛介は自衛官として海外に赴任していました。

赴任先の紛争地で幼い子供をやむなく銃殺してしまったこと、そして同行していた部下が帰国後にPTSD (心的外傷後ストレス障害)に悩まされ自殺したこと 、また瑛介自身も精神に異常をきたし妻子と離婚することになってしまったこと…。

多くの後悔と挫折により、自分が何者なのかが分からなくなっていていわゆる自分探しの一つとして懐かしい楽しい旧友たちのいる自然豊かな故郷に帰ってきました。

瑛介のような命を賭けた危機や部下が死んでしまうような経験もしていませんが、自分自身の境遇と重ね合わせやすかったです。

私も裏切られ、つぶされたショックでいっそどこか山奥にでもひっそりと沈んでしまいたいと思っていました。

緑溢れ、時間の流れの穏やかな世界。

心のどこかでは分かっているのです。

それを本当にしたいわけではないということを。

瑛介もまた、故郷に帰ってきて永住するわけではありませんでした。

このあたりは瑛介に感情移入してしまった人間に「このままではいけないぞ!」と伝えているかのように感じました。

見送る旧友に「またな」と言い残して、瑛介はこの地を旅立ちます。

映画「半世界」のラストを解説

それぞれの挫折と再生

この作品にはさまざまな人生の挫折と再生の分岐点が描かれています。

瑛介は自身のトラウマとどう向き合うべきかを思い悩みます。

絋の息子・明はいじめられている事実と向き合い、立ち向かわなければなりません。

そして、炭焼き職人という仕事を父から受け継いだ絋は、このままの人生だと思っていたのに、契約していた取引先からはことごとく契約を切られ、仕事に行き詰まり打開策を模索します。

また、息子への無関心を光彦に指摘されてから徐々に関係性を築こうと不器用なりに葛藤します。

人生の折り返し地点

瑛介の助けもあり、明はいじめに打ち勝ち、絋は明との親子関係を気づき始めることができました。

妻・初乃の助けにより、倒産かと思われた製炭業も新たな取引先を確保することができ、半世界の名にふさわしくさまざまな折り返し地点の決断を絋は見事に成し遂げたと思われました。

しかしその矢先、絋は山中の炭焼き窯で一人で火の守りをしているときに倒れてしまい、そのまま命を落としてしまいます。

紘は自身の人生を折り返して先に進むことはできませんでした。

しかし絋の心の中では 、家族のことや仕事のことなど中途半端だった問題と不器用ながらも向き合い、折り返し地点に立ち、少しずついい方向に変えていくことができました

半世界という言葉に込められた3つの意味

写真「半世界」の存在

監督自身が語っていることとして、小石清という戦前・戦中の従軍カメラマンの作品名としての「半世界」があります。

いわゆる戦場カメラマンなので、その本分は日本兵の勇姿を写真に収めることでした。

しかし小石清が日中戦争で撮影した写真は中国のおじいさんおばあさん、子供達や鳥や路地の風景ばかりでした。

監督はその写真をみたことで「グローバリズムとかで世界を語るけれど、名もなき人々の営み、彼らが暮らしている場所も世界なんだ」という解釈をし、それを形にしたものが本作です。

半分の世界ではなく、もう一つの世界

半世界と聞くと、半分の世界ともう半分の世界という輪切りにするイメージが浮かびます。しかし監督曰く、半世界とは「もう一つの世界」という意味とのこと。

まさに絋や光彦のように自分たちの生まれ育った街から出たことがない人々にとっての世界と、瑛介のように自衛艦として海外派遣でトラウマを背負う経験をさせてくるような世界もある。

こうした違う世界同士の出会いを描くという意味が半世界というタイトルに込められています。

残りの人生という意味での半世界

キャッチコピーにもあるように、本作の主人公たちは40歳目前で人生の折り返し地点にいます。

人生を半分生きてきた人間たちにとって、ここからもう半分の残りの人生を生きるということが半世界という意味です。

生きている世界と死んだ後の世界

作品中、絋は死んでしまいました。

高校に進学し、父母の色々な思いを汲んだ息子の明が炭焼き窯のところで父の遺影を立てかけながらボクシングの練習をするシーンがあります。

一人の人間の中での半世界という考え方や、色々な国や地域というような半世界だけでなく、家族の繋がりとして残されていくものと受け継いでいくものという意味での継承としての半世界という意味があると感じました。

まとめ:映画「半世界」の感想ネタバレ|タイトルの3つの意味とラスト・結末を解説

SMAPのためにできることを模索した監督の漢気

SMAPに興味がある方は是非監督の男気に触れてください。

多くのメディアがジャニーズ事務所の圧力を恐れ、手を差し伸べない中で「何か自分にできることはないか?」と恐れずに助けてくれた監督の熱さ伝わってきます。

人生に迷った男は観るべき

人生に思い悩む瞬間は誰しもあります。「このままで本当に良かったのか?どうしていくのが正解なんだろう?」と。

登場人物がそれぞれの挫折や壁を乗り越えて再生していく物語です。誰かに感情移入して明日から頑張って生きる勇気をもらえます。

瑛介の帰還から感じること

裏切られたりしてショックを受けた時は、時間の流れの穏やかな世界に浸りたくなります。でも、心のどこかでは分かっているのです。それを本当にしたいわけではないということを。

瑛介に注目して観てもらうと、落ち込んでショックを受けて引きこもって、再起するまでの経験ができます

半世界という言葉に込められた3つの意味

半分の世界ではなく、もう一つの世界

半世界とは「もう一つの世界」という意味。自分の知っている世界と知らない世界、こうした違う世界同士の出会いを描くという意味が半世界というタイトルに込められています。

残りの人生という意味での半世界

人生を半分生きてきた人間たちにとって、ここからもう半分の残りの人生を生きるということが半世界という意味。

生きている世界と死んだ後の世界

家族の繋がりとして残されていくものと受け継いでいくものという意味での「継承」としての半世界という意味があります。